踏み出し始める

たった今、ほんの10秒前に電話を切った

電話をしていたのは大学の学生課だ。

学年と名前を伝えたあと

私はこう口にした

「退学を考えています。」

そう伝えて4分27秒のあいだ話をした

こうして書いている今も鼓動が激しいままだ。

ついに環境を変える時が来たんだと

そのタイミングをまさに今この瞬間に

自らの意思で作り出したのだと。

この５分弱で「退学」がより現実味を帯びた。

目を細めないと見えないほど遠かったそれが

今はもう目の前にある。

これからの人生を生活を大きく変える決断。

自分の心に素直になり覚悟を決め

リスクを背負ってでも進みたいと思った道。

「退学」という２文字４音が

大きくなって耳に響き

重みを増して肩にのしかかり胸にまで。

不安と期待で心臓は今にも弾けそうだ。

頭で考えていたことが

口に出して伝えたことで

こうしてどんどん現実になって進んでいき

やがて学生ではなくなる。

今はまだぼんやりとしか想像がつかないが

その未来を自分の手で良いものにしていく。

安定から外れ不安定に足を突っ込むのだから

もがき苦しんだり失敗したり

さまざまなことが待ち受けていると思う

心が弱るときもきっとある

そんな時はムリをせず少しチカラを抜いて進む

自分のペースで少しずつ着実にやっていこう。

今は一歩目を踏み出すために

膝を曲げて脚を浮かせたところ

ここから前に出し地面につける

そして歩きつづけて進んでいく。